蒼月の約束
第二十三話
寒い時期が、あっという間に過ぎた。
こっちの世界にきて時間の経過が正確に分からないが、冬の期間が今までいたところより短いというのはハッキリしている。
「もうすぐ春ですね」
朝、カーテンを思い切り開けた時リーシャが言った。
雪がちらつかなくなり、少しずつ凍るような気温が和らいでいくのがエルミアにも感じ取れた。
黄金の粉雪のあとは雪が強く、外に出られない日々が続いた。
その度に宮殿内で調べものをしては、ゆったりとした時間を過ごしていた。
しかし、戦いが始まったという不安は常にみんなの胸の奥に眠っていた。
「また精霊探しが始まるね…」
つかの間の平和な日々を思い出しつつも、来る女王との対決に向けて準備を始めないといけないと自覚した。
しかし、本格的に冒険が始まるその前に、片付けるべき問題があった。
「ちょっと相談なんだけど…」
とうとう自分では抱えきれなくなったエルミアは、覚悟を決めてエルフ三人を部屋に呼び出した。
「どうかされました?」
いつものようにリーシャが開口一番に尋ねる。
「困ってるの」
ソファーに深く座り、どう切りこんだらいいか考えるエルミア。
「王子の気持ちが分からなくて」
やはり単刀直入に言うしかなかった。
自分で言っておきながら、恥ずかしさで顔がほてり、自分の勘違いだったらいいんだけど…と付け加えた。