蒼月の約束
てっきり冷やかされると思っていたエルミアは、驚いたように顔を見合わせるエルフ三人を見て慌てて言った。
「も、もちろん、私が、予言の娘として必要とされているのはわかってるんだけど!なんか、王子の態度がさ、今までと違くて戸惑っているというか。困っているというか」
「ミアさまは、どうお思いなのですか?」
リーシャが真剣な表情で尋ねた。
「え?」
聞き返すと今度はサーシャが口を開いた。
「王子のこと、どう思われているんですか?」
口に出していいものなのか、思いとどまった。
口に出すのもおこがましいのではないだろうか。
「私は別に…」
エルミアの心を読んだのか、サーシャが首を振った。
「ここには、私たちしかいません。素直に教えて下さい」
エルミアは自分の目が潤み始めるのが分かった。
「私も分からないの。こんな気持ちになったことが人生で一度もないから」
リーシャが隣に座り、背中をさすった。
「落ち着いて下さい。大丈夫ですから」
エルフ自身が癒しの効果を持っているというのは、事実のようだ。
エルミアはまだ涙ぐんでいたが、深呼吸してから言葉を続けた。
「私が、そういう気持ちを持って良いのかも分からない。グウェンに忠告されたばかりだし…。でも、王子の一挙一動が気になるの。側にいるとドキドキするし、触られると気絶しそうになるくらい」
それから頭を抱えた。
「私、おかしいの。あのペガサスの日に、キ…」
口にした瞬間思い出して、落ち着いた火照りが戻って来た。
「頭から振り払えないの。どうにかして~」
自分の膝に頭を埋めているエルミアを見て、サーシャが独り言のように呟いた。
「試してみる価値はありそうですね」