蒼月の約束


「この辺に本当にあるの?」

王宮のすぐ後ろにある小高い丘に、エルミアとリーシャは来ていた。


久しぶりのハイキングは、冬の間中ずっと宮中でのんびりしていた体には堪える。

重力を物ともしないエルフのリーシャは、さっと先へ見に行ってはすぐに戻って来る。

「こちらの方角ではありませんね。さっきほどの小道を左に行ってみましょう」

体の身軽さに加えて、視力が何倍もいいリーシャが羨ましい。

一体何十メートル先まで見えるのだろう。

こっちに来てから、メガネが必要としなくなった今でも、遠くのものを見る時には限度というものがある。
目的のものはいつまで経っても見えてこない。


「疲れた~…」

はあはあと肩で呼吸しながら、エルミアは近くにあった石に座り込んだ。

「もう、エターナル・フラワーってどこにあるのよ~!」

山の方に向かって叫んだ。



『エターナル・フラワーを探してきてください』

そう言われたのは、大泣きした翌日。

何か案を思いついたサーシャに頼まれたことだ。

『私とナターシャは、準備がありますので』

そう言って、エルミアとリーシャを朝早くからこの丘に送り出した。

『見つけるのは簡単じゃないですからね』

そう言ってウィンクしてみせたサーシャの天使のように美しい顔が、とても憎らしくなった瞬間だった。





「…一体、なんのために必要なのか説明してくれても」

何をさせられているのか、全く教えてもらえないエルミアは、不信感でいっぱいだった。

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