蒼月の約束

行きよりも帰りの方が楽だと感じながら、リーシャに渡されたお花を腕いっぱいに抱えて王宮に戻って来た時には、お腹がペコペコに空いていた。

「あ~お腹空いたよ」

甘酸っぱいエターナル・フラワーの香りを嗅ぎながら、エルミアは呟いた。

「すぐ用意しますので、お部屋でお待ちください」

ふふと笑いながらリーシャが言い、そのままキッチンへと向かって行った。


エルミアは自分の部屋へと向かおうとする。
ふと目の前から王子とグウェンが歩いて来た。

王子はエルミアと目が合うと、ふっと柔らかい視線を向けたが、すぐにその視線はエルミアの腕の中にある花へと移った。

「それは?」

「あ、これは…」

エルミアは、サーシャの名前を出そうとしてとどまった。

この時の対処法も言われていたんだっけ。

「え~と、あげたい人がいるから。取って来たの、さっき」

「自分で取りに行ったのか?」

王子の目が細められる。

リーシャに頼り切りだということがばれてしまったのだろうか。

エルミアは慌てて言った。

「もちろん!自分であの裏山登って、崖のところの花を取ったんだよ!もちろん、リーシャにも一緒に行ってもらったけど…」

嘘が吐けないエルミアは、小声で白状するが、王子の耳には届いていないようだ。

「誰にあげるんだ?」

「えっと~…」

目が泳いだ。

サーシャはなんて言っていたっけ?え~と…

「友達!友達にあげる約束をしているの」

「友達とは…」

「じゃあ、急ぐからまたあとでね!」

これ以上ぼろを出さないよう、王子にこれ以上質問される前にエルミアは逃げるようにその場を離れた。


「あの花、エターナル・フラワーだったと思うが?」

後ろにいるグウェンに聞こえるように王子は呟いた。

「はい。私もそのように見えました」

グウェンは頭を下げながら、しかし、苦い顔をして答えた。

< 193 / 316 >

この作品をシェア

pagetop