蒼月の約束
バタン!と大きな音を響かせて、ドアを閉める。
エルミアは驚きと恐怖で体をすくめた。
だが、ここが王子の寝室だと分かるとすぐに外へ出ようと試みた。
しかし、王子がドアの前に陣取っているせいで、出られない。
金色の取っ手に手を伸ばしながら、エルミアは見上げるようにして王子に懇願した。
「あの、私、ここにいてはいけないんです。グウェンが…」
「あいつは誰だ?なぜ私の宮殿にいる?」
王子の険しい顔が、エルミアに近づいた。
王子特有の甘い香りがふわりと漂い、エルミアは自分の心臓がまたもや爆走しそうなのをぐっと堪える。
とにかく安全のため一歩離れる。
「何、言ってるんですか。あれは…」
先ほどの茶番を思い出し、恥ずかしさでエルミアの視線が泳ぐ。
しかしそんなこと全く知らない王子は、さらに怒りをかきたてる。
「仲が良いのか?いつの間にそんな親密に?」
「だって、ずっと一緒にいるし…」
何を言っているのか、よく分からないエルミアは混乱していた。
「ずっと…?」
王子の視線が痛いほど刺さる。
そして、その目には嫌悪感が渦巻いていた。
見るに堪えなくなったエルミアは、王子から視線を外した。