蒼月の約束
「エターナル・フラワーの意味は知っているのか?」
視線を外させまいと、王子がエルミアの顎を掴んだ。
怖さが相まってエルミアの目に涙があふれ始める。
「し、知らない…」
「あれは、自分の想い人に渡す花だ。自分の心がずっと相手にあると言っているようなものなんだぞ。あいつに渡していいのか?」
エルミアは震えながら言った。
「良いよ!だって、私だって好きだもん。サーシャのこと…」
とうとう名前を出してしまった。
しかし、そんなことお構いなしにエルミアは叫んだ。
「王子には関係ないじゃないですか。何なの、いきなりー。怖いよ~!」
「関係ある」
そう言って王子は、エルミアの口に唇を重ねる。
一気に王子の香りに包まれる。
「私はお前の一挙一動が気になる」
すでに限界を迎えている心臓に追い打ちをかけるように、王子は続けた。
「私は、お前が好きだ」
そして優しく抱きしめる。
その言葉に、思考が停止した。
しばらく部屋の中に沈黙が流れた。
エルミアの脳内では、今王子が言った言葉がぐるぐると回り続けている。
「何も言ってくれないのか?」
柔らかい瞳で、王子がエルミアの涙が頬を伝う顔を覗き込んだ。
綺麗に整った端正な顔が、いきなり焦った表情に変わる。
「やはり、お前は先ほどの奴が…」
「だ、だから、あれはサーシャ…」
そう名前を出すと、王子のスカイブルーの瞳が大きく見開かれ、それから深くため息を吐いた。
「やられた…」
何が起きているのか分からないエルミアは、とにかく自分の頭がおかしくならない内に王子の腕の中から抜けだそうと試みていた。