蒼月の約束
第二十四話
「今日からミアと寝室を共にする」
そう王子が告げた時、一番驚いたのはエルミアだった。
皆がみな、一斉に言葉に詰まり、初めに口を開いたのはやはりグウェンだった。
「王子!何度も申しますが、婚前の身で寝室が同じなど…」
エルミアは身を縮めた。
なぜか自分が悪いことをしている気になってしまう。
グウェンの言葉などなんら効果がなさそうにしている王子はさらりと言った。
「それでは、ミア。結婚するか?」
いきなりとんでもない冗談を振られてエルミアは目を丸くした。
グウェンは文字通り口をあんぐりと開けている。
「お、王子!婚儀は、王と妃が不在では行えません!」
彼のその一言で、部屋に冷たい空気が流れた。
今の国の状況を思い出させるのには、充分の言葉だった。
しばらくの間のあと、王子がゆっくりと言った。
「しかし、ミアの近くにいたい」
そして隣に座っているミアの手を取って言った。
「グウェン、分かって欲しい。この国が元通りになってから、全てを正すつもりだ」
王子の確固たる意志が見えたのか、グウェンはそれ以上何も言わなかった。