蒼月の約束
しかし、このままでは埒があかず、本気で命の危険を感じた朱音は、勇気を振り絞って、喉の奥から声を無理やり絞り出した。
「わ、私は四宮朱音。
とつぜん水に襲われ、気がついたらここに来ていました。
私は何もしていません。何も分かりません。
お願いですから、誰か言葉が分かる方を連れて来て下さい」
通じているか分からないが、とにかく言葉を選び、丁寧に話す。
だんだんと冷えて来た体の寒さと相まって歯がガチガチ鳴るが、朱音は涙を流しながら訴え続ける。
「どうか、言葉が通じる方を…」
椅子に座っている男が、近くの男を呼び、何かを伝えた。
また、怖い顔をした人が力強い声で、朱音に向かって怒鳴るが、朱音は「言葉が分かる方を…」としか言えなかった。
すると、椅子に座っていた男がすっと立ち上がり、ゆっくりと朱音に近づいて来た。
朱音は恐怖で目を見開いた。
なに、されるの…?
体が硬直するのが自分でもわかる位、恐怖が体中を駆け巡る。
しかし、淡いスカイブルーの瞳をした男は、朱音の前に来ると、小声で何か知らない言葉を呟いただけだった。
ふと、小さな光の粒がどこからともなく現れ、朱音の体の周りをクルクルと回り始めた。
朱音はその様子を見ているしかなかった。
その粒は、ゆっくりと朱音の体内へと入って行く。
痛みはなく、ただ温かい感触だけが体中に広がった。