蒼月の約束
一度経験すると、強くなる気がする。
乗り心地が良いとは言えない、うねうねとした竜宮の使いの上でエルミアは思った。
バランスのとり方が分からなかった以前とは違い、何となく動きに合わせれば振り落とされる心配もなさそうだ。
どんどん深みに入って行くにつれて、視界が暗くなっていく。
しかし、赤く光る背びれを頼りに前を見続けていると、苦い記憶の残る海中の滝が現れた。
「しっかり、捕まって下さい」
後ろでリーシャが言い、エルミアは落ちないように竜宮の使いの丸みを帯びた背中にしがみついた。
やっぱり、前言撤回!
全く慣れない、この乗り物!
ジェットコースターのようにどんどん加速しながら下へと落ちて行くが、安全ベルトがないのが一番の恐怖だ。
エルミアは両手両足に力を注ぎ、ぎゅっと目をつぶった。
どれくらいの時間が経ったのか分からない。
しばらく泳ぎ続けたのちリーシャが後ろで小さく「なんだ、あれは…」と呟いたのが聞こえた。
「着いたの?」
エルミアは恐る恐る目を開けながら尋ねた。
「ミアさま、見てはいけません!」
咄嗟にリーシャの細長い腕が回され、大きな手のひらで目を覆われた。
「え、何?一体…」
隣を泳いでいたナターシャの悲鳴が聞こえる。
「ど、どうかしたの?」
心臓が大きく鳴りだした。
絶対に何か嫌なことが、起きているんだ。