蒼月の約束
エルミアは必死にリーシャの手をどかそうとするが、力が強くてびくともしない。

「一体、何が起きているの?教えて!」

エルミアの言葉を無視して、リーシャはナターシャほどパニックを起こしていないだろうサーシャに呼びかけた。

「意識がある者を探せ!」

「は、はい!」

サーシャの焦ったような声が聞こえた。

「意識って…何があったの?リーシャ!」

どんなにあがいても、リーシャは腕に込められた力を緩めようとはしない。


視界を手で覆われていて何も見えないが、その分聴覚はいつも以上に働いているようだ。

リーシャの焦ったような息遣い以外に、何かが擦れあう、さわさわとした音が聞こえる。


その時、サーシャの叫ぶ声が聞こえた。

「いました!まだ息があります!」

リーシャは竜宮の使いを片手で器用に操り、呼ばれた方へと向かう。

「エルフたちか…」

竜宮の使いの動きが止まり、声が聞こえた。

記憶を頼りに声の主を思い出す。


「乙姫さまだ…」

小さく呟いたエルミアの声は、「一体、何があったのですか」と言うリーシャの声によってかき消された。

< 211 / 316 >

この作品をシェア

pagetop