蒼月の約束
リーシャとサーシャに抱えられ、その後ろで警戒しているナターシャが後ろを見ながら弓をつがえていたが、やっと洞窟内へと足を踏み入れた。
急に吹雪が止み、静けさが突然やって来た。
「先へ進みしょう」
吹雪の方を見ながらリーシャが言った。
エルミアには全く見えていないが、おそらくまだ王子たちは戦っているのだろう。
「敵より先に手に入れなければ」
地面に座りこんでいたエルミアの腕をそっと持ちあげ、リーシャは強く言った。
「うん…」
暗い洞窟を進むにつれて、また肌寒くなってくるのを感じた。
風がないとはいえ、顔を刺す冷たい風はどんどん増すようだ。
エルミアは顔の周りの布をさらに上へと上げて出ている部分を減らし、少しでも体温を逃さないようにと自分の体をぎゅっと抱きしめる。
暗闇でも目が効くエルフたちに着いて行くこと数分、どこからか微かな音楽が流れて来た。
「何か聞こえる…」
エルミアが寒さで歯をガタガタさせながら呟くと、隣にいたリーシャが頷いた。
「洞窟を入った辺りからずっと聞こえていました。おそらく私たちを導いているのかと…」
今回ばかりは自分だけではなかったことに、なぜかホッとするエルミア。
「ここですね」
先頭を切っていたサーシャが足を止めた。
エルフたちは身をかがめないと入れない大きさの穴の先には、まるで宝石のように透き通ったエメラルドの草が生えている。
そしてその真ん中には、どこから入る光を浴びているのかは不明だが、光に反射して輝いている一輪のガラスのような花が咲いていた。
「あれが古代花です」
躊躇なく足を進めながら、リーシャが見入っているエルミアに言った。