蒼月の約束
あっという間に夜になった。
リーシャたちが何度か食事を持ってやって来たが、エルミアは寝ているふりをし続けた。
今夜が会えるのが最後になってしまうかもしれない。
そう思うと心が引き裂かれるようだった。
でも、いつも全力で助けてくれるエルフ三人を、これ以上危険な目に遭わせたくない。
あの悪夢がリーシャたちに降りかかるかもしれない。
とにかく、勘付かれないように…。
そうするには、疲れて眠っているように見せるのが一番だった。
リーシャが最後にやって来て、エルミアが寝ているのを確認すると、入り口の電気を消して立ち去った。
それが合図かのように、エルミアは自分ものとは思えないほど重く感じる体を起こした。
眠っていないのに、あの悪夢は見ていないのに、心の中は完全に恐怖に支配されている。
何を考えるにも全て最悪な展開へと向かってしまう。
そしてその全てが、自分の招いたことなのだと。
「これ以上、誰も苦しませたくない…」
エルミアは小さく呟くと、ベッドからゆっくりと出た。
ふらふらと噴水の方へと歩いて行く。
廊下は静まり返り、物音一つしない。
エルミアもなるべく音を出さないよう、息を潜めながら必死に歩いた。
「お、来たね」
レ―ヴは噴水前のベンチで寛いでいた。
フードは被らず、短い銀髪が月に照らされて白っぽく光っている。
相変わらずエメラルドの瞳は、警戒しているようだが、エルミアに向かって笑った時には、奥底にある人懐っこさを映し出した。