蒼月の約束

噴水のヘリに捕まりながらエルミアは途切れ途切れに聞いた。

「私が行けば…他の人は無事なんでしょ?」

レ―ヴは肩をすくめて、立ち上がった。

「全員とは言わないけど。少なくとも君のお友達は…」

そこまで言いかけて、緑色に光る瞳が大きく見開いた。

あっという間の出来事で、エルミアは何が起きているのか分からなかった。

頬を風が微かに触れた、そういう感覚だけだった。

しかし、瞬きが終わった頃には、レ―ヴは鋭く長い王子の剣に突き付けられていた。

そして、その周りには弓をつがえたグウェンとリーシャがいた。

「あらら。僕としたことが…」

レ―ヴは自分が危機的状況に陥っているとは思えないほど、気楽に構えている。

しかし、腰についている短剣から手を離そうとはしない。


「ミアさま、大丈夫ですか?」

倒れそうになったエルミアを後ろから、サーシャとナターシャが支えた。

「なんで…」

それだけがエルミアの口から漏れた。

しかし王子の落ち着いた、威厳のある声にかき消された。

「どういうつもりだ?」

レ―ヴは喉に剣を突き付けられているというのに、やれやれというように目をぐるりと回した。

「面倒なことになっちゃったな」

「問いに答えろ!」

グウェンが手に力を込めて叫んだ。

至近距離に弓が二つ。そして喉元に剣。

レ―ヴは降参、というように両手を挙げた。

「はいはい。説明しますよ。でも、この状況だと出来ないけど?」

この呑気さは、グウェンとリーシャを更にいらだたせた。

しかし、王子は目でグウェンに合図し、リーシャもゆっくりと弓を降ろした。

しかし鋭い目はそのままレ―ヴに向けられている。

「逃げたら即効打つからな」

グウェンが苦々しく言った。

この言葉を無視して、レ―ヴはベンチにまたもや座った。

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