蒼月の約束
「だからエルミアちゃんを助けたかったら、女王の城に行くしかない」
「わ、私、行く…」
喉から声を絞り出して、エルミアは言った。
エルミアに一斉に視線が刺さった。
「だめだ。危険すぎる」
王子が真っ先に反対した。
「女王の呪いが全く効かなかったお前が、今、女王の呪いにかかっているんだぞ。分かっているのか」
表情では読み取れないが、王子は怒りに震えていた。
「僕に言わせてもらうと、女王は、真っ先にエルミアちゃんの呪いを解くと思うけどね」
また一斉に視線がレ―ヴへと移る。
「エルミアちゃんは、精霊と会話するよう女王から命じられるはず。その為に彼女にかかった呪いをすぐさま解いてあげると思うね。女王も失敗はしたくないだろうし」
皆の探るような視線を一心に受けて、レ―ヴはため息を吐いた。
「信じて貰えるとは思ってないけど、これしか今の彼女を救う方法はない。君たちが、エルミアちゃんの呪いが解かれた頃に、女王の城に忍び込めばいいじゃないか」
いつか解かれるのかは知らないけど、とレ―ヴは付け足したが、エルフ達は、悪くない考えだと思ったようだった。
その場が一瞬静かになった。
「だが…」
王子だけが未だに渋っていた。
しかし今にも倒れそうなエルミアを治す手立てはここにはないことも分かっている。
王子は視線をレ―ヴに向けた。
「お前は、女王の手下ではないのか?」
レ―ヴの瞳が揺れた。
「僕はたった一つの目的さえ果たせれば、それでいい」
それが答えになったのかは不明だが、王子の警戒が少しだけ緩んだのは分かった。