蒼月の約束
シノミヤアカネ。

しのみやあかね…。

四宮朱音…!


女の子の声が頭の中でこだまし、パンと何かがはじけ飛んだ。

いきなり全てがクリアになる。まるで、ずっと水中にいたところから、水面に上がった時のように、頭の中の靄が一気に晴れた。


「わ、私は…朱音だ」

ゴツゴツとした地面を見ながら、朱音は消え入りそうな声で呟いた。

「私はエルミアじゃ…ない…」

そして顔を上げると、大泣きしている懐かしい妹の姿があった。

怒りなのか悔しさなのか、体を震わせている。

「あ…ありさ…」

亜里沙はまたもや朱音に抱き付いた。

「お姉ちゃんのバカ!」

更にその後も怒涛のように朱音をけなす言葉が続いたが、しがみついている腕の力は強く、心の底から喜んでいるのが伝わってくる。

「…ごめん」

朱音も亜里沙の背中に腕を回し、力を込める。

どのくらいの間、自分の大好きな家族のことを忘れていたのだろう。

いつから、思い出さなくなっていたのだろう。

あまりにも自分が惨めで、そしてこの世界に長くいることの危機感を覚えた。



二人は抱き合ったまま長い時間が過ぎた。

腕が痺れ始めたころ、朱音はやっと体を離した。

まだ泣いている亜里沙の頬から、涙を拭きとりながら朱音は聞いた。

「どうしてここに?」

亜里沙は、気持ちを落ち着けながら朱音の手を握った。

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