蒼月の約束
「僕の両親を奪った王族を消し去ることも出来る」
「…そんな」
「そしてやっと、たどり着いた。異界の娘がこの世界を救うという予言に」
「だから、私を助けてくれたの…?亜里沙も…?」
レ―ヴの鋭いままの瞳を瞬かせた。
「姉を取り戻すためには、何でもする」
悲しいが、王族に対して大きな復讐心に燃えているレ―ヴの気持ちが、なぜか痛い程に伝わってきた。
私も、亜里沙を元の世界に戻すためならなんだってする…
必ず。
「さ、お喋りはここまでだよ。予言の娘さん」
そう言いながらレ―ヴは朱音の腕を掴んで歩き始めた。
「確かに君には力がある。この世界の救世主だと予言があるから。でも、一度女王の手にかかったら…」
朱音は目の前の大きな木を見て悲鳴に近い金切り声を上げた。
「ありさ!!」
目の前に立ちはだかる大きな木に抱きかかえられるようにして、亜里沙は眠っていた。
瞳は閉じていて頭はもたげている。
木がなければ安らかに眠っているようにしか見えない。
「な、なんで…ここに…!」
声がかすれた。
「女王に先手を打たれたってとこだね」
女王の声が頭の中にこだまする。
大事な者を守りたければ、私を裏切るな
「…どうしたらいいの?」
元の世界に帰るという約束を、亜里沙と今さっきしたばかりなのに…。
「女王…」
固く結ばれた唇から一筋の血が流れた。
レ―ヴが何か言う前に、突然に朱音は扉に向かって走り出す。
全力で走ればこの気色の悪い恐ろしいエルフの森を見なくて済む。
涙でかすむ目の端に、探していた海のように青い髪を見た気がする。