蒼月の約束
私は間違っていなかったはずだ。
死者を生き返らせるという禁断の術に手を出したのも悔いはない。
そのおかげで、兄は再び命を宿したのだから。
しかし、禁術も完璧ではない上に、それ相当の対価が伴った。
自分の命をも削り試みたにも関わらず、兄の心臓を動かすだけで精一杯だった。
兄は今もなお、あの小屋で死人のように眠り続けている。
だから強大な力を求めた。
全ては、兄を眠りから覚ますために。
そして、王族と裏切り者のロダを滅ぼすために。
長い歳月がかかった。
死者を生き返らせる以外であれば、どんな願いでも叶えるという精霊の話を耳にしたのはとんだ偶然だった。
それから、精霊と唯一言葉を交わせる種族も突き止めた。
歌姫エルミア。
ちょうどいい。
王子との婚約が決まっているエルミアを使い、精霊を呼びだす準備を始めた。
その頃には恐ろしい西の女王として世界に悪名を馳せており、純血エルフに恨みを持つ配下も増えていた。
エルフの王族と戦争を起こすために、ロダを見せしめにすることにした。
思い出のネックレスを送り、案の定ロダは倒れた。
混乱状態に陥った王国を滅ぼすのは、なんとも造作ないことだった。
王が間際にかけた保護呪文で残念ながら、王宮と第一王子は無事なようだが、監禁状態と言ってもいい。
奴らが出来ることなど何一つない。
自分の負った痛手を回復するにも時間が必要だった。
エルミアを精霊への生贄にし、私は永遠の命を得た。
しかし、犯してはいけない領域に踏み込んだ対価は大きかった。
禁術を使ったせいで永遠の命を持ってしても体を蝕んでいく。
その為にも禁術にさえも覆されぬ更に強大な力が必要なのだ。
今度こそ、純血で作られた王国を根本から滅ぼし、兄を、そして殺された両親をも生き返らせる。
私の手で必ず、愛する人たちを蘇らせるのだ。