蒼月の約束

「女王が、お前の居場所を知ったら厄介だ。
今、血眼になって探しているはず。
女王の狙いは分からないが、お前が必要ということだけは、ハッキリしている。
ここにいてもらう」

「ちょ…」

朱音は慌てて何か言おうとしたが、王子の側近の怖い顔をした男に手で制されてしまった。

「王子の言う事が聞こえただろう。お前はただ王子の命に従えばいいのだ」

王子は、有無を言わせない威圧的な視線を朱音に向けた。

昨日と同じ強い瞳だ。
人を黙らせる力がある。

「戻し方が分かり次第、伝える。しばらくは、この王宮にいろ。何不自由なくさせる」

そう言い残すと、多くの側近を引き連れて部屋から出て行った。

それでも、朱音の部屋にはまだ10人以上の女エルフが残っていた。

人と関わるのが、あまり得意でない朱音は、ソファーに座ったまま息をひそめていた。


…早く、帰りたい。



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