蒼月の約束

それなのに、まさか…

まさか、私の命をつなぐために召喚した者に邪魔されるとは。

だが、私は願いを果たすまで、死ぬ訳にはいかない!

娘が巨大な鏡に向かって歩き始めた。

「ま、待て…!」

急いで呪文を唱えるしかし、朱音に向けて伸ばしかけた手は、空しく宙を掴んだ。


轟音が鳴り響き、鏡の中から放たれた一筋の光の矢がヘルガの心臓に直撃した。

自分が吹き飛ばされたと思ったその瞬間、目も開けていられないほどの光が、辺りを飲み込み、そして何も見えなくなった。







乾いた土のにおいが鼻をつき、ヘルガは自分が地面にうつ伏せに倒れていることに気が付いた。

私はまだ死ぬわけにはいかないのだ…

復讐を果たすまでは…

起き上がりたいのに体が鉛のように重く動けない。

全身に力を込め、手を握り締めるが、砂を少しけずっただけだった。

突然さわやかな歌声が響いたかと思うと、いきなり睡魔が襲い掛かってきた。

まるで呪術にでもかかったかのような重い瞼に抗えずにヘルガは目を閉じた。


ここで終わるわけには…

私は…






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