蒼月の約束
「…いっ、おい!」
強く肩を揺さぶられてヘルガは目を覚ました。
地面が目の前にある。しばらくの間眠っていたようだ。
「大丈夫か?」
心配そうな色を含ませた声が、ヘルガの脳内に響いた。
おそるおそる体を起こし、日に焼け頑丈そうな体格をした人物の顔を見て絶句した。
「不用心だな。こんなところで寝てるなんて」
兄が腰に手をあて、目の前で苦笑している。
「この森は猛獣がいるから危ないって言ってるだろう」
「兄さ…」
そう声に出してまた驚いた。
まるで別人が話しているかのように幼さが残る声色。
そして両手、両足、体を触る。
髪も昔のように黒魔術に支配されるの金髪に戻っている。
若返っている。
兄を亡くしたあの時と同じ。
なぜだ。
なぜ、私は生きている…
「なんだ?変な夢でも見てたのか?」
怪訝な顔をしている兄。
ああ、そうか…。
夢なのか、これは。
そうだとすると、なんと残酷な夢なのだ。
ヘルガは苦笑した。
「夢の中でも私はこういう仕打ちをうけるのか」
「おい、人の話を聞け」
突然、兄が頬をつねった。
ヘルガは驚きで目を見開いた。