蒼月の約束
部屋のあちこちに飾られているエターナルフラワー。
アルフォードは椅子に腰かけながら部屋を見渡した。
エルミアに貰った気がするが。
いつ貰ったのか定かではない。
ドアがノックされ、エルミアがお茶を用意して入って来た。
「お疲れとお聞きしましたので。少し休まれればと…」
グウェンがすぐさま反応した。
「ちょうど休憩を入れようと考えていたところでした。私どもは席を外しますのでごゆっくり」
エルフたちが部屋を出て行くのを見送ってから、エルミアはアルフォードに向かって丁寧にお辞儀をし、机の上に並べられたティーカップにピンク色のお茶を丁寧に注ぐ。
それから、未だ窓の外をぼんやりと見つめている王子に横笛を差し出した。
「よろしければ、音楽を聴かせていただけません?幼少の時のように」
音楽で気持ちを少しでも和らげられればという気づかいを感じ、アルフォードは手渡された横笛を手に取る。
エルミアは近くの椅子に腰かけた。
唇を軽く当て、音楽を奏で始めた。
心の中になにか温かいものが生まれた。
どこか懐かしく、そしてどこか切ないそんな音色。
ふと、曲が止まった。
「リンディル様…?」
エルミアがどうかされましたか、と声をかける。
「これは…どこで手に入れたものだ?」
アルフォードは横笛をじっと見つめている。
「どうでしょう…。物心ついた時からありましたので。先代さまからの遺品ではないでしょうか」
首を振るアルフォード。
「それはない。これは、ドワーフが作ったものだ。しかもごく最近に」
エルミアが何か反応する前に、アルフォードはすっと立ち上がりグウェンを呼んだ。
「出てくる。行くぞ、グウェン」
「リンディル様…」
その場に取り残されたエルミアの悲し気な声は、アルフォードの耳には届かなかった。