蒼月の約束


部屋のあちこちに飾られているエターナルフラワー。

アルフォードは椅子に腰かけながら部屋を見渡した。

エルミアに貰った気がするが。

いつ貰ったのか定かではない。


ドアがノックされ、エルミアがお茶を用意して入って来た。

「お疲れとお聞きしましたので。少し休まれればと…」

グウェンがすぐさま反応した。

「ちょうど休憩を入れようと考えていたところでした。私どもは席を外しますのでごゆっくり」

エルフたちが部屋を出て行くのを見送ってから、エルミアはアルフォードに向かって丁寧にお辞儀をし、机の上に並べられたティーカップにピンク色のお茶を丁寧に注ぐ。

それから、未だ窓の外をぼんやりと見つめている王子に横笛を差し出した。

「よろしければ、音楽を聴かせていただけません?幼少の時のように」

音楽で気持ちを少しでも和らげられればという気づかいを感じ、アルフォードは手渡された横笛を手に取る。

エルミアは近くの椅子に腰かけた。

唇を軽く当て、音楽を奏で始めた。

心の中になにか温かいものが生まれた。

どこか懐かしく、そしてどこか切ないそんな音色。


ふと、曲が止まった。

「リンディル様…?」

エルミアがどうかされましたか、と声をかける。

「これは…どこで手に入れたものだ?」

アルフォードは横笛をじっと見つめている。

「どうでしょう…。物心ついた時からありましたので。先代さまからの遺品ではないでしょうか」

首を振るアルフォード。

「それはない。これは、ドワーフが作ったものだ。しかもごく最近に」

エルミアが何か反応する前に、アルフォードはすっと立ち上がりグウェンを呼んだ。

「出てくる。行くぞ、グウェン」

「リンディル様…」

その場に取り残されたエルミアの悲し気な声は、アルフォードの耳には届かなかった。


< 286 / 316 >

この作品をシェア

pagetop