蒼月の約束
「俺に何の用だ」
エルフには小さすぎるテントに通され、アルフォードはアゥストリと対面した。
グウェンはテントの外で静かに見張りをしている。
外からは何があったのかと興味を隠せないドワーフたちが騒いでいる。
「これはお前が作ったものなのか」
アゥストリは笛をまじまじと見つめた。
端から端まで綿密に見ている。
「確かにこれは俺が作ったものだ。丁寧に名入れまでしている」
驚いた様子を隠せないアゥストリは、アルフォードをにらみつけた。
「これを一体どこで手に入れた」
「王宮にあったものだ。なぜこれが王宮にあるのか、それを聞きに来た。ドワーフが楽器を作るなど、聞いたことがない」
切り株できたテーブルより高い位置にある足を組み替える。
「何か知っていることはないか?」
「悪いが…」
アゥストリは笛をテーブルに置いた。
「記憶が全くない。これは確かに俺が作ったものだ。しかし…」
そう言ってから笛をまた凝視する。
「これは」
「なんだ?」
半ば食い入るようにアルフォードが聞いた。
「俺の名の下に何か書いてある…二人目のミア?」
「なんだ、それは」
「さあな。しかしこれは、俺がこの【二人目のミア】に宛てて作ったものらしい」
二人の間に沈黙が流れた。
作った本人がいつどこで誰の為に作ったのか思い出せないのでは、何も解決しない。
これ以上ここにいても意味がないと悟ったアルフォードは席を立った。