蒼月の約束
バシャ!
何かが落ちる音がして我に返った。
自分が今、湯あみの最中だと思い出した。
湯気がもうもうと立ち込めている様は、まるで今の自分の頭の中を反映しているようだ。
「申し訳ありません。いきなり像が…」
側にいたグウェンが頭を下げ、後ろにいた付き人たちに様子を見てこいと命じる。
ばしゃばしゃと豪快な音を立てて、何が落ちたのかと探す側近たち。
ふと、何かを思い出す。
この光景は、前にも見た気がする…
いや、思い出せない。何か大切なものの気がするのに…
頭を抱えている王子を気に掛けるグウェン。
「湯あたりでも?」
「…そうかもな」
王子は立ち上がり、湯船から出る。
服を着せてもらいながら無意識に置いてあるネックレスに手を伸ばした。
アゥストリに渡されて以来、肌身離さず持っている星形のネックレス。
ふと、星の間に何かが挟まっているのを見つけた。
「なんだ、これは」
古くなって汚くなったゴミみたいな布きれ。
今にも消えそうな文字で何かが書かれている。
グウェンが顔をしかめた。
「王子。それは?」