蒼月の約束
「私もエルミアの立場だったら、きっと私のこと利用すると思うし…」
そう言って笑うと、エルミアの顔にも少し笑顔が戻った。
「でも一つ、気になることがあるんだ」
ソファーに腰かけながら、朱音は聞いた。エルミアもそれに倣う。
「エルミアの予言にはすごく助けられてたんだけど、時々エルミアじゃない声も聞こえてたんだよね」
エルミアは目の前にあった、気持ちを落ち着けるお茶を一口すすった。
「おそらくそれは、西の女王の仕業です。桃の石を見つけた時に忠実な部下を失ってしまったので、アカネさまたちに見つけさせようと企んでいたのです」
「あれは女王だったのね」
「アカネさま…」
エルミアは聞いてよいものかとカップの淵をなぞっていたが、顔を上げた。
「あの、女王は…」
「うん。女王は、人生をやり直してる」
女王の過去を思い出して、朱音はふと笑みをこぼした。
やっと女王も幸せになる時がきた。
復讐に身を焦がすことなく、自分の寿命を縮めて人生を無駄にすることもなく。
ただ、大切な人たちに囲われて。
「もうエルフの国は安泰だから、安心していいよ」
エルミアがほっとしたよう微笑んだ。
その笑顔があまりにも神々しくて、朱音はしばらく言葉を失った。