蒼月の約束

女王の配下だったときのような、自分を強くみせるような攻撃的な雰囲気は全くなくなっていた。

やっと子供らしいレ―ヴに出会えた気がした。

朱音はレ―ヴに駆け寄り、思いっきり抱きしめた。

「良かった。お姉さん戻ってきて」

「うん、ありがとう」

朱音の肩に顔をうずめてレ―ヴは涙声で言った。

「本当にありがとう。命がけで、約束を果たしてくれて」

それから朱音は涙ぐんで立っているエルフに声をかけた。

「おかえりなさい」

きっとレ―ヴのお姉さんも怖い思いをしていたに違いない。

女王に生贄として連れていかれたのだから。

「今は何をしているの?」

レ―ヴから離れ、朱音は聞いた。

「僕たちは旅人なんだ。各地を旅しながら困っている人たちを助けてる」

それから悲しそうに少し目を伏せた。

「思い出したのは最近だけど、僕は自分がやったことの償いが出来ればなって思ってる。
ずっと記憶のない罪悪感に苛まれてたけど、やっと理由が分かった。みんなにしてきた仕打ち。
でも前を向いて行こうと思う。僕には家族がいるから」

「うん」

女王の配下として多くの悪いことをしていたかもしれない。

でも亜里沙を助けてくれたことは事実だ。

レ―ヴもまた子供に戻って幸せになるべきだ。

思わず自分より背の高い子供をまた抱きしめてしまう。

「今度こそ幸せになるんだよ」

「ありがとう…」

いつの間にか隣に来ていた王子が朱音をレ―ヴから引き離す。

「そろそろ解放してやれ」

帰り際、レ―ヴが言った。

「本当に感謝してる。エルミアちゃん」

「アカネだ」

王子が訂正した。

「アカネね。いい名前じゃん。エルミアより似合ってる」

生意気な言葉を残し、仲良さげに姉弟は帰って行った。



< 299 / 316 >

この作品をシェア

pagetop