蒼月の約束
「いつまでそこに座っているつもりだ?」
朱音の背中に向かって王子が言う。
「あの…」
いきなり緊張してきた。
「大丈夫、何もしない」
そう言いながら王子は朱音の腕を引っ張った。
どさっとベッドに倒れこむ。
至近距離に王子の顔がある。
漂う甘美な香りに一気に酔いそうになる。
滑らかな金色の髪が朱音の頬を撫でる。
白い細い指が朱音の顎に添えられる。
「ちょ…何もしないって…」
「何もしていないが?」
神々しい顔して意地悪っぽく笑う王子に、今にも心臓が破裂しそうだ。
王子は愛おしそうに朱音の輪郭をなぞる。
「やっと手の届く距離だ」
そう呟きながら朱音の額に唇を当てる。
このままでは私がおかしくなりそう!
朱音はガバッと後ろを向いた。
「おやすみなさい!」
王子はクスクスと笑いながら朱音の腰に手を回した。
「おやすみ」
腕に力がこもっている。
二度と逃がさないとでも言うように…
朱音の中に悲しみの渦が渦巻いていた。