蒼月の約束
朱音は震える手を、王子の頬に添えた。
「王子、私はあなたに出会えて本当によかった。心から幸せだった」
「…行くな、アカネ」
「あなたは一国の王子。全うしないといけない責務がある。私なんかに構っててはだめ」
無理やり笑顔を作る。
「城下町を歩いて思ったよ。素敵な人たちが多いのは、王族が国民に愛されてるからだって。だから王子も、必ずみんなに愛される王さまになってね」
「アカネ…私は…」
朱音はそっと王子に口づけをした。
「約束して。絶対幸せになるって」
「待て…」
「さようなら、王子」
さようなら、愛おしい人。
あなたと出会えて本当によかった。
いつか、ほんの一瞬でもいいから、思い出してくれますか?
あなたの隣に、私がいたことを…
王子が口を開く前に、虹色の光が朱音を包んだ。
次に目を開けた時には朱音の姿は消えていた。
蒼い月が煌々と夜空で輝いていた。