蒼月の約束
「精霊との交渉はうまくいった。エルフの国と人間界、行き来が出来るようにした」
「これでいつでも会いに来られますよ!」
サーシャが嬉しそうに言った。
「人間界も旅行してみたかったし!」
飛び跳ねるナターシャを鎮めるリーシャは、困ったように笑った。
「再度精霊の道具探しをするという、アルフォードさまの案を聞いた時は驚きでした」
グウェンも呆れた表情でため息を吐いた。
「私は、王権を放棄した時のほうが驚きましたが」
「はい?」
開いた口がふさがらない。
「王位継承を…?」
「伝えたと思うが?もう王子ではないと」
「いやいや、ちょっと待って。頭がついていかない」
文字通り、頭を抱える朱音。
全く同じ反応をしました、とグウェン。
「アカネに最後に言われた言葉が引っかかっていた」
王子は朱音に向き直る。
「私が後継者だから負担なのだと」
いや、それもあるけど、
それだけじゃないというか、
そういう問題じゃないというか…
「分かっていないな」
アルフォードは困惑している朱音の顎を持ち上げる。
「私にとって王座を受け渡すなど容易だ。お前ほど大事なものはない」
そしてまた軽く口づけをする。
「愛する者を手放すくらいなら、何でも捨てる」
それから意地悪そうに目を光らせた。
「もう逃げられないぞ」
思考が停止しそうになるのを、首を振って何とか持ちこたえる。
「ちょっと待って、エルミアは?婚約は解消しても…」