蒼月の約束
第七話
「私たちは、この王宮の外へ出ることが出来ません」
宮殿内を案内してもらいながら、リーシャが言った。
リーシャが先頭を歩き、エルミアの両隣に腰まで届いた三つ編みのナターシャと、赤い花を頭につけたサーシャがいる。
「どうして?」
秋の色づく木々を見つめながら、エルミアは聞いた。ここにも四季があるのかと思うと嬉しくなる。
「西の女王に呪いをかけられちゃったから…」
一番年下であろう幼い顔に三つ編みをしたナターシャが、隣で言った。
ため口は無礼だとリーシャが鋭い視線を送ったが、エルミアは気にしないで、というよう手で合図を送る。
「呪い?」
確か王子が、女王に支配されているとか言っていた気がする。
「一歩でも外へ出たら、術中にハマり心が毒される。そして心の病を抱えた人は西の女王の元へと向かう。女王の呪いはそれほど危険なの」
「そうやって女王は自分の勢力をつけているんです」
今度はサーシャが言った。
「じゃあ、ずっとここにいるの?」
足を止めてエルミアは三人に聞いた。
「はい。王と妃が女王に負けて以来ずっとです」
そう言えばずっと違和感を覚えていた。
王子はいるのに、この王宮には一緒に住んでいるはずの王と妃の姿がない。
「そのペンダントは、もともと妃のモノだったのです」
リーシャがエルミアの胸元にかかっているペンダントを見つめながら言った。
「呪いのペンダント…」
王子とその側近が話していたのを思い出した。