蒼月の約束
第九話
その日は朝から、宮殿で働いているエルフたちの様子がいつもと違っていたせいか、変化に気づくのは容易かった。
朝食をとっている時も、何人かのエルフはバタバタしているし、いつも側にいるリーシャと三つ編みのナターシャはおらず、今日は黄色い花を頭に着けているサーシャのみだった。
相変わらず豪華な朝食が提供されているが、ゆっくり食べていられるほど、宮殿内は落ち着ついてはいない。
「…一体、どうしたの?」
聞いていいものか悩んだが、エルフたちの緊張感が痛いほど伝わってくるので、隣に立っているサーシャに声をかける。
言おうか、言うまいか悩んでいる様子だったが、我慢出来なかったようだ。
すぐに口を開いた。
「ドワーフが、今、私たちの宮殿に…」
「ドワーフ?」
少し前に、側近のグウェンに、自分が新種のドワーフと言われていたのを思い出す。
ドワーフとは、大きなひげを蓄えた小人ということしか知らない。
「それが何か問題なの?仲が悪いとか?」
未だ朝食の席に着きながら、エルミアは聞いた。
空のコップに水を注ぎながらサーシャは頷く。