蒼月の約束
王子は、エルミアと同じサイズの、深緑色の天蓋付きベッドの上であぐらをかいていた。
そして、四人が入って来るのを見ると、室内にいた他の付き人を外で見張るように指示した。
エルミアをソファーに座るよう合図し、自分もその向かいに座る。
「精霊の書についての手がかりとなるものは、残念ながら見つからなかった。
私たちが立ち入れる場所も少ない。
この周辺以外はまだ呪いが残っているところも多く、おそらく女王の支配下に入っているものも多い。一度、女王に忠誠を誓ったら、出ることはほぼ不可能だからな」
「ドワーフには何か聞けた?」
リーシャが淹れてくれたお茶を口に運びながら聞いた。
「いや。私たちに話すことは何もないそうだ。門前払いされたよ」
困ったように髪の毛をかきあげる王子に思わず目が釘付けになってしまう。
「あのさ…」
エルミアは、手元のカップに目を移しながら気まずそうに言った。
「もし、女王より先に精霊を呼び出すとするでしょ?そしたら、どんな願い事をするの?」
室内が静まり返るのが分かった。王子がゆっくりと口を開いた。
「この国を元通りにし、女王を永久に追放する」
「そっか…」
一国の王子として大きな責任を持っている断固たる決意の王子に、その一つきりの願いを「私を帰らせる」ということに使ってくれとは、言えなそうにない。
エルミアは静かに黙るしかなかった。