蒼月の約束
森に入る時には、少し躊躇していた三人だが、エルミアを先頭にリーシャが続くと二人もおそるおそるついてきた。
そして、何も起こらないと分かると、嬉しそうに周りを見渡しながら歩いた。
「もう絶対、外を歩くことなど出来ないと思っていました」
リーシャが、隣でそう呟いた。
瞳には悲しそうな、でも嬉しいような複雑な色が混ざっている。
「恐ろしかったあの森が、こんなステキだったなんて…」
上を見上げながら、サーシャが言った。
木漏れ日の間から、太陽の光が差し込み、木々がキラキラと輝く。
「今日は人生で一番いい日!」
近くを歩いていたサーシャに抱き付きながらナターシャは言った。
「遠くまでは行きませんからね」
念を押すように言うリーシャの声を後ろで聞きながら、エルミアは看板がないかと探していた。
この先にきっとドワーフの村があるはず。
「もしかして」
リーシャがエルミアに駆け寄った。
「本気で、ドワーフの村に行くなんていうつもりじゃ…」
「行くよ」
「ミアさまは、私たちとドワーフの関係を分かっていません!」
「え~でも、私が行くと分かっていて、承諾してくれたんじゃないの?」
エルミアは、リーシャの方を向きながら話す。
「情報集めに協力してくれると思ったのに」
「しかし…、王子も仰っていたように、私たちエルフは歓迎されないのです」
「でも、アゥストリは、名前を出せば歓迎してくれるって言ってたよ?」
後ろ向きに歩いていたので、危うく道標を倒すところだった。
その木でできた矢印型の看板には、「ドワーフの村あちら」と丁寧に書かれていた。
「ほら、ちょっとだけ覗いて行こうよ。ダメだったら帰るから」
お願いのポーズをして、リーシャの顔色を窺う。
この人には何を言っても無駄だと悟った顔で、リーシャは本日何度目か分からない「少しだけですよ」と呟いた。
ドワーフの村は、いとも簡単に見つかった。