蒼月の約束
赤い三角屋根が連なる村が、すぐ向うに見えてきたと同時に、軽快な音楽も流れている。
ドワーフの村と聞いて、かなり不安そうな顔をしていたサーシャとナターシャも音楽が聞こえ始めると警戒を解き始めた様子だった。
村の入り口には、低い柵が立ててあり、「不法侵入お断り」と乱暴な字で書かれていた。
「お邪魔しま~す」
なんの躊躇もなく入って行くエルミアに呆れながら、三人はおそるおそる長い脚で柵をまたいだ。
奥へ行くにつれて軽快な音楽は大きくなりはじめ、いろいろな楽器を使って演奏しているのが分かった。
地面には、石のレンガ道が敷かれ、靴底が当たる音さえも音楽に聞こえてくる。
ふと、近くの小さな家の前で立っていたドワーフに声をかける。
「こんにちは」
男性なのか女性なのか分からない身なりをしているドワーフは、怪訝そうにエルミアを見たあと、後ろの三人を見て悲鳴を上げた。
「きゃあああああ!エルフよ!」
「えっ、ちょ…」
その女性の悲鳴を聞きつけた、ドワーフの中ではきっと体格の良い大男たちが走ってやって来た。
「エルフの襲来か!」
「ち、違います!」
エルミアは慌てたたように言ったが、遅かった。
大きな斧を持った、何人もの強そうなドワーフに一気に囲われてしまった。
「私たちは、話があって…」
「エルフに話すことなどない!」
警戒モードのドワーフに何を言っても通じなさそうだ。