蒼月の約束

「だから、言ったじゃないですか…」

エルミアを護る体勢に入りながら、リーシャが呆れたように言った。

「ごめん…だって…」

リーシャの肩越しに、エルミアは声を大きくして怒っているドワーフに話かけた。

「私たちは、アゥストリに会いに来たんです!」

「エルフに用はない!」

自分の名前を出せば、親切にしてくれるって言ったじゃん!

アゥストリの嘘つきー!


そう叫びたかったが、これ以上ドワーフを触発したくないので、ぐっと堪える。

「とにかく、アゥストリに会わせて!エルミアって言えば、分かるはずです」

どうにか彼に会えばこの場は収まるのに、全くもって聞く耳を持ってくれない。

イライラしたサーシャが弓を構え、あの幼いナターシャでさえ腰に差していた二本の双剣を取り出した。

「あ~もう!戦闘モード、だめ!」

2人の攻撃体勢を、戦闘開始と捉えたドワーフたちはさらに仲間を呼んだ。

自分たちの身長の半分しかないドワーフ達にも関わらず、多勢には勝てるはずもなく、エルミアたちはいとも容易く縄で縛られてしまった。


「お前たちを連行する」


四人は、数人のドワーフたちに引きずられるようにしてドワーフの村を抜けた奥へと連れて行かれた。


着いた場所は、どんよりとした空気が漂うジメジメとした暗い洞穴(ほらあな)だった。


その穴の奥深くへとドワーフについて入って行く。

身長が低いドワーフには、問題ない穴の大きさだが、普通の身長の倍はあるエルフたちには腰をかがめないと通れない道でもあった。

平均身長より低めのエルミアはぎりぎり問題なかったが、後ろの方で「あいたっ」と聞こえるあたり、三人とも洞穴の天井に頭をぶつけていることだろう。



< 81 / 316 >

この作品をシェア

pagetop