蒼月の約束
ずいぶん歩かされたと思った時に、やっとドワーフが立ち止まった。
「ここにいろ」
そう言って、四人を既に壁にくくりつけてあった鎖につなぐ。
「ちょ、ちょっと待って。アゥストリに会わせてくれれば、誤解が解けるの!
本当に!お願い、エルミアって名前を伝えてくれさえすれば…」
必死の懇願も、冷たい目でエルミアたちを見つめるドワーフたちには通じなかった。
「西の女王にも罠にはめられた。今回もだます気だろう。信用などするものか!」
洞穴の中は暗くてよく見えないが、ドワーフたちが笑っているのに気づいた。
「ここに、俺たちの村を襲撃したやつを監禁したんだ。仲良くな」
言っている意味がよく分からなかったが、よくよく見ると足元にはいくつもの骨が落ちている。
「ほ、本当に!お願い!信じて!」
エルミアが後ろで縛られている鎖をガチャガチャ鳴らしながら言うと、隣で先ほどまで黙っていたリーシャが鋭い口調で、静かに言った。
「お前たち、何をしているのか分かっているのか?戦争になるぞ」
背筋の凍るような声に、隣にいたエルミアも思わず体を強張らせた。
同じ感覚を覚えたのはエルミアだけではなかったようで、笑っていたドワーフ達の顔から笑みが消えた。
「お、お前たちの処分は長老が決める。黙ってろ」
そう言って足早にその場を離れていった。
洞穴が、しんと静まり返った。
聞こえるのは、穴の中に入って来る隙間風の不気味な音と、近くで滴る水滴の音だけだ。