蒼月の約束


グウェンの看病が実を結んだのか、王子は次の日にはエルミアのお気に入りの噴水の場所に姿を現した。


「あ、王子」

一人でぼーっと考え事をしていたエルミアは、突然の王子の登場に慌てて立ち上がった。

「もう大丈夫なんですか?」

「ああ。心配かけたな」

顔色は良くなったものの、色白の肌のせいか目の下のくまがまだ残っているのには、嫌でも気づいてしまう。


これ以上、王子の負担にはなりたくない、と思ったエルミアは予言について話すかどうか迷ってしまった。


しかし、また日を改めてと、決心したエルミアをよそに、王子の鋭い視線がエルミアの手首に注ぐ。



その視線に気づいたエルミアは、慌てて手を後ろに隠すが、一瞬のうちに間合いを詰めた王子によって手首を掴まれていた。


「これは、なんだ?」

いきなり声のトーンが落ちる。


エルミアの手首には、まだドワーフ達によって縛り上げられたときの縄の痕がくっきりと残っていた。


「えーっと、これは…」

完全に目を泳がせて、エルミアはたじろいだ。


ここにリーシャたちがいなくて本当に良かったと思った。

そうでなければ、三人とも床に額をつけて謝っていたことだろう。


それくらい、今の王子の気迫は凄まじい。


「言わないのであれば、エルフに直接聞いてもいいのだぞ」


めっちゃ怒ってるよ~!

エルミアはそれだけは、やめてと首を振った。


「私の不在中に何をしていた?」

また一つ声のトーンが落ち、エルミアはおそるおそる口を開いた。


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