蒼月の約束
第十三話
「ミアさま?」
突然名前を呼ばれて、エルミアは我に返った。
リーシャが不安そうな顔をして、隣に立っている。
いつの間にか、図書室に到着しており、エルミアとリーシャ以外は既に絨毯の上に腰を下ろしていた。
「だ、大丈夫…。ごめん」
そう言いながらエルミアは、いつものように王子の隣に座った。
「お前たちのことだ。とっくに太古の森や、鴉の社についての情報は掴んでいるのだろう」
王子が口を開いた。
「私たちは、森の入り口まで行ったのだが、入ることは許されなかった」
「じゃあ、私が行くしかないよね」
さっきの不安を頭から振り払うように、務めてエルミアは明るく振舞った。
「私には呪文が効かないんだから」
王子は頭を振った。
「いや、だめだ。危険すぎる」
「でも、女王がそれを手にするのも時間の問題だと思う。善は急げって言うし」
さっきまで、幽霊がどうのこうのと騒いでいた割に、積極的に森に行こうとしているエルミアを、不安げに見つめるリーシャ。
「それにね」
エルミアは続けた。
「ドワーフの洞穴にいた時に、また声が聞こえてきたの」
「ドワーフの洞穴だと?」
王子の目が見開いた。
「あの、劣悪な監禁場所にいたのか!」
リーシャ、サーシャ、ナターシャは慌ててすぐに頭を上げた。
「も、申し訳ございません!」
「ミアの手首の傷は、それで…」
「ちょっと待って、そこは重要じゃないの」
エルフ三人の顔を順に上げさせながらエルミアは言った。
「その時に聞いたのは、古代花の光る蕾。なんか心当たりある?」
エルミアの次なる予言に興味をひかれた王子は、エルフ三人を叱責するのをやめた。