蒼月の約束
リーシャが用意してくれた、心を落ち着けるピンク色のお茶のおかげで、エルミアはぐっすり眠ることが出来た。
予言を聞かず、悪夢も見ずにただ、深く深く眠りにつくことが出来た。
そして朝、目が覚めた時には、昨日の押しつぶされそうな不安はほとんど残っていなかった。
そのためか、朝食の席で、王子が「今日は、ミアを連れて太古の森に行く」と言った時には、驚いてスプーンを落としたほどだ。
「中に入るかは、その場に行ってから決める」
なぜ王子がいきなり考えを変えたのかは不明だが、これでまた一歩精霊の書に近づいたのは確かだ。
アゥストリが言っていた通り、その森までの道のりは単純だったが、片道に一日かかってしまった。
朝ごはんを食べてすぐに出発したというのに、森に着いた時にはすでに夕方になっていた。
日が落ちたせいなのか、もともとこの森が薄暗いのかは分からないが、とにかく不気味な雰囲気が漂っている。
「うわぁ…」
太古の森をいざ目の前にすると、自分で行くと言ったことを、後悔し始めていたエルミアは、思わず後ずさった。
何百年もの間、ずっと変わらずに立っているであろう木々が、ところどころに生えており、完全なる森とはいかないが、薄気味悪さは、ピカイチである。
「声が聞こえるか?」
王子が隣で静かに言った。
エルミアは耳を澄ましてみるが、何も聞こえない。
木々が風に揺れて、さわさわ鳴る音だけだ。
「聞こえないよね?」
後ろを振り返ってぎょっとした。