蒼月の約束
リーシャ、サーシャ、ナターシャはかなり青ざめており、体調も悪そうだ。
いつも表情が崩れないグウェンでさえ、吐きそうなのか口に手を当てている。
「私たちは…許されません」
苦しそうにリーシャが言った。
「王子…。そろそろ…、森から離れて下さい…」
グウェンがそう言うのを聞いて、王子が平気な顔で立っている訳ではないとエルミアは気づいた。
エルミアの隣に立っているだけで辛いのだ。
「ちょ…。早く森から離れて!」
王子をグウェンたちの近くまで連れて行き、エルミアはふうと深呼吸をした。
「やっぱり、私が行くしかないみたいだね…」
明らかに何かしらの影響を受けているエルフ五人に対し、
自分は、森に入るという恐怖感のみで、なんの声も聞こえないし、変な感覚もない。
腹をくくるため、エルミアは森に向き合い、もう一度深呼吸をした。
「さて、行きますか!」
森に生気を奪われているせいか、王子の弱った「待て…」と言う声は、エルミアの耳には届かなかった。