蒼月の約束

リーシャ、サーシャ、ナターシャはかなり青ざめており、体調も悪そうだ。

いつも表情が崩れないグウェンでさえ、吐きそうなのか口に手を当てている。

「私たちは…許されません」

苦しそうにリーシャが言った。

「王子…。そろそろ…、森から離れて下さい…」

グウェンがそう言うのを聞いて、王子が平気な顔で立っている訳ではないとエルミアは気づいた。

エルミアの隣に立っているだけで辛いのだ。


「ちょ…。早く森から離れて!」

王子をグウェンたちの近くまで連れて行き、エルミアはふうと深呼吸をした。

「やっぱり、私が行くしかないみたいだね…」

明らかに何かしらの影響を受けているエルフ五人に対し、
自分は、森に入るという恐怖感のみで、なんの声も聞こえないし、変な感覚もない。


腹をくくるため、エルミアは森に向き合い、もう一度深呼吸をした。

「さて、行きますか!」


森に生気を奪われているせいか、王子の弱った「待て…」と言う声は、エルミアの耳には届かなかった。

< 98 / 316 >

この作品をシェア

pagetop