妹を溺愛する兄が先に結婚しました
お兄ちゃんがそんなことを?


お兄ちゃんも気付いてたんだ。



「真崎先生との約束、守れなかった。

……ごめん。自分では無自覚だった」


「ううん。表情に出すなって言われても出ちゃうものだと思うから」


「……うん、ありがとう」


「…………」



時原は優しい。


辛い思いをして、消化できない爽への気持ちでいっぱいいっぱいなのに、私のことも考えてくれる。


……でも、その優しさが時原を苦しめているなら、私はいらない。



「爽に()うつもりはないの……?」


「ないよ。俺は、和奏も好きだから。


……離れようと思えば離れられたんだ。

そうすれば、ここまで引きずらずに済んだ。


そうしなかったのは、爽への想いよりも3人でいる時間の方が大切だから。楽しかったから。

それを壊すことは、俺にはできなかった」


「そっか。そう思える人に出会えたのはすごいことだね」


私の言葉に対して、時原はちょっと驚いたように微笑んだ。



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