妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「あの、真崎先輩……」


“先輩”と呼ばれてちょっとしみじみ。


振り返ると、1年の夏目 三つ葉(なつめ みつは)ちゃんがいた。


小柄な三つ葉ちゃん。

小動物みたいでつい愛でたくなる。


だから、苗字ではなく下の名前で呼んでいる。


「ビブスってどこへ返せばいいですか……?」


「ビブスは洗うからそのままでいいよ」


「……あ、私、洗いますか?」


「ううん、大丈夫。私が当番だから私が洗うよ」


「じゃあ……、よろしくお願いします」


三つ葉ちゃんを愛でたくなる理由の1つに、この真面目さがある。


他の1年は私に兄のことばかり聞くのに、三つ葉ちゃんだけは何も聞いてこなかった。


興味がないのか知らないけど、それだけでいい子認定。

私って単純なんだよ。



ビブスが入った籠を三つ葉ちゃんから受け取ろうとした、その時。


「悪いけど、今日は夏目がやって」


兄が割って入ってきた。


「……は?何言ってんの。私が当番なんだから」


「1年にも経験を積ませないとでしょ。洗濯室に先輩がいるだろうから聞いて」


「わ、わかりました……」


三つ葉ちゃんはそのまま籠を持って立ち去った。



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