妹を溺愛する兄が先に結婚しました
今までだってそう。


学校での私の様子を知らないはずの兄が、どうしてか私の好きな人を知っていた。


忍者?スパイ?ストーカー?

いろいろな可能性を疑ったけど、やっぱり勘がいいんだろうな。


お兄ちゃんってよく周りを見ているし。


それか、私が表情に出しているか。



ともかく、このまま潰されるわけにはいかない。


ただでさえ、好きな人がいる相手を好きになった時点で負け戦なんだから。



「買わないの?」


考え込んでいた私の耳にその言葉が届いて、我に返る。


……いや、ていうか。今の声。


ビックリして振り向くと、やっぱり時原がいた。


咄嗟に退く。


「わ、ごめんっ」


「……ため息してたけど、何かあったの?」


「え、聞いてたの?」


頷く時原。


……恥ずかしい。


「ちょっといろいろあってね……、──っ!」


その時。

私の耳にある声が届いた。


「ヤバいっ!」


時原の背中に隠れる。


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