妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「どうしたの……?」


「ヤバいヤバいっ、お兄ちゃんいる」


「?」


姿は見えなかったけど、絶対近くにいる。


声が聞こえたもん。


「ほんとだ。よくわかったね、あんな遠くにいるのに」


「……こっちに気付いた?まだいる?」


「もういないよ」


ホッと胸を撫で下ろす。



「はぁ……、ごめん」


「ため息の理由は真崎先生?」


自販機からガコンッと飲み物を落として、時原が聞く。


そういえば私も飲み物を買いに来たんだっけ。

……ま、いいや。


「うん、まあ……。

もしかしたら、これから時原に迷惑をかけるかもしれない」


「俺?なんで?」


「えーっと……」


兄に私の気持ちがバレたと言おうか迷った、その時。


「あ」


時原が声を漏らしたので、顔を上げれば。


「ほんと油断も隙もねぇな」


呆れ顔の兄がいた。



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