妹を溺愛する兄が先に結婚しました
あれから変わったことといえば。


時原は、笑顔こそ見せないものの、辛い顔もしなくなった。


私との距離は相変わらずだけど、でも包み込む雰囲気は甘くなった気がする。


それよりも、大きく変わったのは和奏の態度。


あからさまに私と時原をイジってくるようになった。



おかげで、兄の顔色を窺う日々なんだけど。



***



教室に行くと、時原が窓際の席で伏せるように寝ていた。


日向ぼっこして寝てる猫みたい。


このまま寝かせてあげたいけど……。



「時原、起きて。もうすぐバスケの試合だよ」


優しく声をかける。


だけど、起きる気配がない。


「おーい」


枕代わりにしている腕をツンツンと突く。



と、その時!



「──っ!」



突いていた手を突然掴まれた。


え……?



「ときはら……?起きてるの?」


「ん。起きた」


そう答える時原は、しかし身体を起こそうとはしなかった。



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