妹を溺愛する兄が先に結婚しました
伏せたままなので顔が見えない。


なのに、手はぎゅっと掴まれたまま。



「時原……、あの、手……」



手の熱に心臓がバクバクする。


離れようと手を引いても、離してくれない。



ゴツゴツした手と力強さが、時原は男の人なんだと意識させる。



「……もうちょっと」


そんなわがままを口にしたっきり、時原は何も言わなくなってしまった。



しばらくそのまま。


スマホが鳴って、


『静也が来ないんだけど!試合が始まる!』


という和奏からの電話でようやくムクリと起き上がって、手も離された。



今のがなんだったのかわからない。


だって、こんなに私はドキドキしてるのに、時原は平然としているんだもん。



なんか駆け引きに私が負け続けてる気分。



***



「あ、静也来た!」


「来ないかと思ったじゃん!お前がいないと勝てないんだから」


「……なんで?」



< 170 / 447 >

この作品をシェア

pagetop