妹を溺愛する兄が先に結婚しました
柄にもないことを考えながら歩いていると。


「あの、時原先輩……!」


よく知る名前を呼ぶ声がして、咄嗟に隠れた。


角を曲がった先。

そっと覗くように顔を出すと、そこに時原と三つ葉ちゃんがいた。


「なに?」


「さっきの試合、すごくカッコよかったです……!」


「ありがとう」


「私も先輩みたいに上手くなりたいって思いました。


……それで、あの。

次の試合、時原先輩のクラスと戦うんですけど……。


私のこと見ていてくれませんか?」


意を決して言う三つ葉ちゃんの言葉を、耳を塞ぎたい気持ちで聞いていた。


時原のクラスってことは、私と戦うってことだよね。


……それを見越してお願いしてるのかな。



「いいけど」



時原の返答を聞いた瞬間、私はその場から逃げ出した。



***



「……ついでってことでいいかな?」


「え……?」


「俺、応援しなきゃいけない子がいるから。その子から目を離せない」


「あ、そうなんですね……。えっと、それって……誰ですか?」


「プレースタイルが俺に似てる子、らしい」


「……?」



< 177 / 447 >

この作品をシェア

pagetop