妹を溺愛する兄が先に結婚しました
そんな和奏に、



「……ダメだ。帰れ」



兄から無情な言葉が落とされた。


場に緊張を走らせるほどのあまりに冷え切った声。


恐る恐る兄に視線を移すと、眉間にしわを寄せて見下ろしていた。



兄が言葉を続ける。


「お前はまだ高校生なんだ。家にはちゃんと帰れ」


「……あんな家、帰りたくないっ」


「親と喧嘩したか?

それならなおさら、感情に任せて他人に迷惑をかけるな」


なんでそんな厳しい言葉をかけるんだろう。


そう思うのに、

兄が“先生”として言葉を選んでいる気がしてならない。


先生として生徒のことを考えるなら、兄の言葉は間違っていないのかもしれない。



とその時。


「待って、桜太くん!」


ゆかなさんが止めに入った。


和奏の隣で正座をし、震える声で言葉を紡ぐ。


「和奏を責めないで。

こうなったのも、全部私のせいなの。

私のせいで……、私がわがままをしたから……。


本当にごめんなさい。

桜太くんの言ったことはすべて正しいと思う。


……でも、お願いします。

和奏のわがままを聞いてくれませんか?」


話のほとんどが理解できなかった。


私のせい……?

わがまま……?


ゆかなさんたちに何があったんだろう。



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