妹を溺愛する兄が先に結婚しました
何回かのコール音の後。


『はい……』


眠そうな声がした。


「あ……、いきなりごめん。……寝てた?」


声が震えそうになるのを必死に抑える。


『うん……。なに?』


「……あの、静也なら知ってるかと思って」


『?』


電話したのは静也。

もしかしたら静也なら和奏から聞いているかもしれないと思って。


「静也は、和奏が家出してること知ってる……?」


『家出?……知らないけど』


返答を聞いて、深い息が漏れる。


……静也にも言ってないんだ。


「そ、そっか……」


『爽……今、外にいる?』


「え、なんで……?」


『虫の声がするから。

……よくわかんないけど、どこにいるの?』


虫……?

ああ、ほんとだ。


耳を澄ませばこんなに虫の鳴き声がするのに、全然入ってこなかった。



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