妹を溺愛する兄が先に結婚しました
その時。


突如、頭上から影が落とされた。


背中からとてつもない威圧感。

瞬間的にピクッと身体が反応する。


私に触れていた時原の手が離れた。

……正しくは、離された。



「なにしてんの?」


冷えきった声が耳を貫く。


声を聞いただけで……、ううん。

後ろから感じる威圧感だけで、それが誰だか嫌でもわかる。


小さく息を漏らしながら、チラッと振り返れば。


やっぱりそこにいたのは、兄。



私を挟んで向き合う2人。


兄の威圧的な態度だけで怯んでもおかしくない、そんな状況で。


「なにって……、頭撫でていただけですよ」


兄に掴まれた手を離しながら、そのままの状況を時原が伝えた。

表情を変えず、淡々と。


……改めて言葉にされると恥ずかしいんだけど。



そう言われた兄が、果たしてどういう表情をしているのか。


怖いもの見たさで兄の様子を窺うと、

ピクリと眉が動いた。さらに、片方の口角を上げる。


明らかに顔が引きつっている……。



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