妹を溺愛する兄が先に結婚しました
花火の時間までになんとか風呂から上がり、女バスのみんなと外に出ようとして。

玄関で男バスとばったり顔を合わせた。


言い出しっぺの高村が大きな袋を持っている。


「それ、花火?足りるの?」


「先生が買い足してくれた」


袋の中を覗くと、たくさんの花火が入っていた。


すすきやスパーク、手筒、線香、打ち上げ。ねずみ花火まで。

……種類も数も多くて、楽しそう。



顔を上げて、ふと。


すぐ傍に立っていた時原と目が合った。

距離が近い時に時原の高さに合わせようとすると、自然と上目遣いになる。


反対に、時原には見下されている形で、なぜかじっと見られている。

……照れるんですけど。


かと思えば、顔が近付いてきて……、

髪を結んで露わになっていた私の首筋で止まった。


「──っ!?」


突然の距離感に焦る私と、謎の行動に疑問を浮かべるみんな。



すぐに距離を戻した時原は……、


「いい匂いがする」


と穏やかに言った。


……ビックリした。

匂いを嗅がれていたんだ。


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